欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は14日、欧州は自らの自立性を維持し、生産性向上を実現するために、人工知能(AI)技術を利用するだけでなく、開発・供給する側にならなくてはならないとの考えを示した。
欧州企業はAIへの投資を進めているものの、技術の大半を米国を中心とする外国に依存しているため、アクセスが制限されるような事態になれば脆弱な立場に置かれ、あらゆる産業に影響が及ぶ恐れがあると懸念されている。
ラガルド総裁はウィーンで行った講演で「数年以内にAIは国境での貨物検査や税務申告の監査対象の選定、鉄道の運行管理、病棟での患者監視、銀行の決済処理などを担うようになる」とし、「アクセスが停止されたり利用条件が変更されたりすれば、影響はあらゆる分野に同時に及ぶ。いかなる貿易相手国もこのような影響力を欧州に対してこれまで持ったことはなかったが、関税やデジタル課税などを巡る交渉で利用される可能性がある」と警告した。
欧州連合(EU)と米国は重要な同盟関係にあるものの、関税問題や米国によるグリーンランド取得要求、欧州駐留米軍の撤収などを巡り、近年は相互の信頼が揺らいでいる。
ラガルド氏は、こうした状況を打開するには欧州域内の計算・演算能力を拡充する必要があるとし、AIを迅速に導入できれば、10年間で生産性を最大4%押し上げることができる可能性があり、公的財政にとって大きな変革につながると指摘。「欧州には自らの需要を満たすだけのデータセンター容量が不足している。こうした傾向が続けば、不足幅は10年以内に6倍超に拡大すると予想される」とし、広範な用途に対応する優れたAIモデルを欧州のインフラで運用できるようになれば、アクセス遮断の脅威は力を失うとの考えを示した。
このほか、米国のテクノロジー企業は巨額の投資資金の一部を欧州市場で調達しているため、欧州で資金調達コストが押し上げられているとも指摘。欧州の年金基金も米国のテクノロジー企業に多額の投資を行っているため、市場が調整局面に入れば、欧州の家計資産に影響が及ぶとの見方を示した。