中国のスタートアップ企業、ディープシークが低コストのAI(人工知能)モデルをリリースし、世界のテック業界を揺るがしてから1年。国内の競合他社はより万全な準備を整え、消費者への訴求力を高めた新モデルの投入で火花を散らしている。 杭州に拠点を置くディープシークが2025年初頭の春節期間中に急成長を遂げたことで、中国のAI業界は一変した。低コストのオープンソースモデルをエコシステムの中心に据える流れが決定的となった。今年の春節(2月15日開始)も、複数の企業がこの時期に合わせて新製品を投入する。 米国の輸出規制により先端半導体へのアクセスが制限されているにもかかわらず、ディープシークが強力なモデルを開発したことは業界を驚かせた。アンクラ・コンサルティング(北京)のマネジングディレクター、アルフレッド・モントゥファルヘルー氏は「今や市場の期待は非常に高い。新モデルが期待外れに終わることこそがサプライズになるだろう」と指摘する。 すでに動きは活発化している。ZhipuAI(2513.HK)は11日、コーディング機能を強化し、ユーザーの指示なしで長時間タスクを実行できる最新モデルを発表した。バイトダンスは12日、数秒で映画のような映像を生成できる動画生成AI「Seedance2.0」を公開。同社は中国で最も人気のあるAIアプリ「豆包(Doubao)」のアップグレードも予定している。 さらに、ディープシークは次世代モデル「V4」の準備を進めており、アリババ集団(9988.HK)も数学的推論やコーディング能力を高めた「Qwen3.5」シリーズを発表する見込みだ。 ディープシークが25年1月に起こした旋風は、米エヌビディア(NVDA.O)の時価総額を1日で5930億ドル消失させるなど、世界の市場を震撼させた。米調査機関RANDの報告書によると、中国のAIモデルは米国の同等システムと比較して、約6分の1から4分の1のコストで運用されているという。 かつて百度(バイドゥ)の李彦宏(ロビン・リー)最高経営責任者(CEO)らは「クローズドソース(非公開)が主流になる」と主張していたが、現在は方針を転換。バイトダンスやテンセント(0700.HK)、ムーンショットなどの中国勢が、AIモデル共有のプラットフォーム「ハギングフェイス」を席巻している。 一方で、各社の戦略には違いも見え始めている。研究開発を優先できるヘッジファンド傘下のディープシークに対し、上場企業であるアリババなどは、AIを通じた直接の商品購入など、収益化に向けた実用的な機能への統合を急いでいる。