国連貿易開発会議(UNCTAD)のグリンスパン事務局長は2日、国際貿易と金融システムを調和させる重要性に言及し、それを怠れば途上国が最も苦痛を受ける公算が大きいと警告した。
UNCTADは同日公表した報告書で、現在では金融市場における状況変化が、実際の経済活動の変化と同じぐらい国際貿易を左右すると分析。その理由として金融環境が国際貿易取引環境を決定し、世界的な開発の見通しを形成する度合いが高まる一方になっている点を挙げた。
グリンスパン氏は声明で「貿易は単にサプライヤーのつながりではなく、融資枠や決済システム、通貨市場、資本フローのつながりでもある」と強調した。
またグリンスパン氏はロイターのインタビューで、金融と貿易は極めて緊密に同調しているので、市場でボラティリティーないし不確実性が増大すれば、国際貿易に重大な影響が及ぶと説明した。
国際貿易取引の9割強は銀行の資金に依存し、ドルの流動性とクロスボーダー決済システムは依然として国際商取引に不可欠な存在だ。
UNCTADは「この金融チャネルへの深い依存により、貿易は国際的な金融・通貨環境と緊密に結びついている。主要金融センターにおける金利もしくは投資家心理の変化は、世界的な貿易規模に影響を与え得る」と述べた。
その上で途上国の成長スピードは先進国を上回っているものの、資金調達コストは割高で、資本フローも不安定であるとともに、気候変動関連リスクが増大しており、これらの要素は持続的成長の維持に必要な投資や財政出動余地を制約しているとの見方を示した。
UNCTADは、貿易と金融が足並みをそろえ、長期的な安定を確保するための改革を訴えている。具体的には貿易ルールの近代化や国際通貨システムの変革を通じた通貨や資本フローの変動抑制、手頃なコストで長期資金を調達する道を拡大するための資本市場強化などだ。
グリンスパン氏は「真の耐久性に必要なのは何か。それは貿易と金融、持続可能性の連携を認識した統合的な政策の枠組みだ。基本的に、貿易を金融から切り離して理解することはできない」と語った。