タイ中央銀行のウィタイ総裁は26日、通貨バーツの高騰を抑制するため、ボラティリティーを緩和する大規模な市場介入を実施したと発表した。バーツは対ドルで4年超ぶりの高値を付けている。
バーツ相場は今年、対ドルで10.3%上昇しており、アジア通貨の中で2番目に高い上昇率を記録している。バーツ高は、米国の関税、高い家計債務、カンボジアとの国境紛争、2月初旬に控える総選挙を巡る政治の不透明感に直面する同国にとって、新たな重荷となっている。
ウィタイ総裁は記者団に「下半期に大規模な介入を行ったが、変動を和らげるにとどまった。ボラティリティーを減らしたい。輸出業者や経済に打撃を与えるほどのバーツ高は望ましくない」と述べた。また、国際合意に基づき通貨を操作することはできず、バーツ相場に特定の目標水準は設定していないとした。
バーツ高の要因については、ドル安、資本流入、予想を上回る経常黒字を挙げた。
中銀は26日、20万ドルを超える資本流入に対する監視を強化する措置を開始。銀行に対し、より厳格な審査を義務付けた。
総裁は「資金流入の目的や書類を精査するのは今回が初めてだ」と説明している。これは、バーツ高の一因とされる金取引の規制に続く措置となる。
また中銀は同日、融資保証制度も発表。これに伴い今後1─2年で新規融資が1000億バーツ(約32.2億ドル)増えると予想している。
同制度は2026年1月に開始する。対象となる中小企業向けには最大1億バーツの融資、一般企業向けには最大1億5000万バーツの融資に保証を付ける。
ウィタイ総裁は、利下げだけでは構造的な問題は解決しないとの考えを改めて示した。