欧州と米国の国債利回り差が拡大している。経済情勢、金融政策の見通しの違いが背景にあり、この状況は当面続くと予想されている。
米独の10年債利回り格差は7月以来最大となる約183ベーシスポイント(bp)に拡大した。ゴールドマン・サックスは200bpまで拡大する可能性を指摘。ブラックロックの欧州ファンダメンタル債券部門共同責任者サイモン・ブランデル氏は「こうした市場力学はまだ続く」とみる。
9月の米雇用の伸びは予想を大幅に上回り、米国経済の力強さが浮き彫りになった。一方、ユーロ圏の企業活動は9月に予想外に縮小した。
トレーダーは、米連邦準備理事会(FRB)の次の利下げ幅は9月の0.50%から縮小すると予想する。欧州中央銀行(ECB)については、9月に続く2カ月連続の利下げの可能性を織り込んでいる。
金利見通しの違いから、ユーロ/ドルは約2カ月ぶりの安値に下落している。
ドイツ政府は先週、2024年の成長率予測を下方修正し、2年連続のマイナス成長との見通しを示した。経済の屋台骨であるはずの製造業の落ち込みが背景にある。
フランスは財政赤字削減に向け増税と歳出削減を打ち出している。投資家はおおむね必要な措置と受け止めているが、景気への悪影響が予想される。
UBSの欧州金利戦略責任者ラインアウト・デボック氏は、成長率が回復しない場合、ユーロ圏の金利が来年1%まで低下する可能性があると指摘した。中国の成長鈍化も投資家の懸念材料だ。
トレーダーは、現在3.5%のECBの政策金利(中銀預金金利)について、来年後半に2%まで下げて打ち止めとみている。2%は、多くのエコノミストが景気をふかしも冷やしもしない「中立金利」とみる水準。バンク・オブ・アメリカのアナリストは、ユーロ圏経済が2%を維持できるか懐疑的だ。「現在の状況は17─18年と大差ない。民間の内需は依然として驚くほど弱い」とし、欧州債利回りの低下(価格上昇)を予想する。
ただ投資家が全員ユーロ圏の先行きを悲観しているわけではない。
プレミア・ミトン・インベスターズの債券部門責任者、ロイド・ハリス氏は「欧州のデータは問題なく、実際、予想を上振れている」と述べ、市場は利下げを織り込み過ぎだと指摘した。