ユーロ圏国債の利回り差
(スプレッド
)は2008年のリーマン・ブラザーズ破綻時以来の最小水準にあるが、地政学的な変動が欧州に支出の見直しを迫る中、改革の深化なくして一段の縮小は困難との見方が投資家から出ている。
安全資産であるドイツ国債に対する南欧諸国の利回りプレミアムは、欧州中央銀行(ECB)の利下げ見通しが明らかになった23年終盤以降、ほぼ一貫して縮小を続けている。
しかし、エコノミストがより深く流動性の高い債券市場の創出につながると考える「統合ポイント」までさらに低下する余地は限られている可能性を市場参加者は指摘する。統合ポイントはユーロの役割を世界的に強化するための重要な一歩だ。
1月にトランプ米大統領がグリーンランド買収をほのめかしたことでスプレッドは一時的に拡大したが、その後再び縮小した。
イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャのスプレッドは現在それぞれ約53ベーシスポイント(bp)、37bp、24bp、43bp。金融危機が発生する以前の債務負担が現在よりもはるかに少なかった07年のスプレッドはイタリアが約22bp、スペインとポルトガルが5bp、ギリシャが25bpだった。
PIMCOのポートフォリオマネジャー、コンスタンティン・べイト氏は08年の世界金融危機以前の状況について、「(一部の)スプレッドがゼロに近い水準にあったのはファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が常に要因だったわけではない。通貨同盟が時間をかけて完全な財政・政治同盟へと進化するとの期待があったためだ」と述べた。
「周辺国のスプレッドについては引き続き前向きだが、機構面の改善がなければ縮小余地は限定的かもしれない」と指摘。銀行同盟、資本市場の統合、共同発行、財政面での共有などの進展が必要との見方を示した。ラガルドECB総裁は昨年、ユーロの国際的な存在感を高めるためにこれらが進展が必要と述べていた。
<EU統合と政治情勢>
アナリスト予測と市場価格から判断すると、ECBはユーロ高を踏まえ、今年中に追加利下げを実施する可能性がある。アナリストによれば、これにより今年のスプレッド安定化が図られる見込みだ。
政治面では、パンデミック(新型コロナ大流行)期の欧州連合(EU)「次世代」基金(NGEU)と軍事費増額の必要性が、共同債券発行拡大への期待を後押ししている。これが南欧の国債を支えており、アナリストは効果が27年まで持続すると予想している。
しかしドイツの反対姿勢を踏まえると、エコノミストは共同債発行に懐疑的だ。
政治的に不安定と長い間見なされてきたイタリアは欧州で比較的安定した国の一つとなっている。一方、ドイツでは極右のユーロ懐疑派政党が勢力を拡大していることもあり、政治はより不安定になっている。
バークレイズのユーロ金利戦略担当責任者ローハン・カンナ氏は「イタリアやその他南欧諸国の政治は私が最も懸念していない部分であり、私がより懸念しているのはNGEU後に市場がイタリアをどのように評価するかということだ」と指摘。バークレイズは、スプレッドは狭い範囲で取引されるが、イタリアは南欧の他の国々よりものスプレッド縮小余地が小さいと見込んでいる。