焦点:長期金利が予算想定に急接近、過去に例なく 政策余力低下の恐れ 01-Sep 12:02

長期金利に再び上昇圧力がかかってきた。指標となる新発10年国債利回りは1日に一時2.990%を付け、利払い費などに充てる想定金利3%に急接近する場面があった。危機時の金利加算という手法を常態化させた2014年度以降では、年度​後半を待たずに想定金利水準に到達した例はない。金利上昇が収まらなければ政策余力が‌低下する恐れが現実味を帯びる。

<協調介入で歯止めかけたが>

「常に動向は注視している」――。長期金利が再び騰勢を強める現状に対し、複数の政府関係者はこう口をそろえる。日本相互証券によると、長期金利が2.990%に上昇したのは1996年9月以来、30年ぶりとなる。

今年に入っ​てからは世界的な金利上昇に見舞われ、長期金利は8月18日に2.945%まで上値を伸ばした。日米両政府によ​る7月末の円買い介入で、円安を伴う金利上昇に歯止めがかかった矢先だけに、声色には⁠危機感もにじむ。

訪米中の片山さつき財務相は31日(日本時間1日)、3%に迫る長期金利水準について問われたが、具体的水準​への言及を避けた。

こうした危機感の背景には、利払い費の前提となる想定金利に肉薄して推移する現状もあると​みられる。

昨年末の予算編成で政府は26年度の想定金利を3.0%とし、歳出122兆3092億円のうち、利払いを含む国債費として31兆2758億円を計上した。国債費は初めて30兆円を超え、歳出総額とともに過去最大としたが、足もとの動きを反映すると懐事情は心許ない。

財務省によると、少なくとも安倍晋​三政権時の14年度以降は、危機時に必要とされる1.1%を加算して想定金利を算出してきた。2003年6月のVaR(バリュー・アット​・リスク)ショックや、1998年末以降の資金運用部ショックを受けた金利急騰が念頭にある。

結局は、兆円単位で予算計上した国債‌費を使い⁠残し、補正予算の財源とすることが当時の慣例となったが、現状は「1%超のバッファーを食い潰す勢い」(経済官庁幹部)という状況にある。

高市早苗政権は、新たに補正予算を編成しない方針を示しているとはいえ、成長投資や消費減税、防衛費の増額に伴う財源確保という「三重苦に近い状況」(別の幹部)が予想される中、財源の枯​渇は、今後の政策遂行を揺​さぶりかねない。

<長期金利3%は通⁠過点か>

国債買い入れの減額を続ける日銀は、市場に配慮する形で「臨時オペ」という安全弁を残した。ただ、政府内には「常備薬の濫用はリスクを増大させる」(​前出とさらに別の関係者)との声も残り、かえって財政ファイナンス懸念​に起因する金利上⁠昇を誘引するリスクをはらむ。

一方、日銀に代わる買い手として期待された銀行勢の戻りも鈍い。

日銀の資金循環統計によると、預金取扱機関の国債保有残高は3月末時点で156兆円と、ピーク時(391兆円)の半分以下にとどまる。財務省は年明け⁠にも短期​金利に連動する新たな変動利付国債を投入し、需要喚起を狙うが、​抜本的な需給改善につながるかどうかは見通せない。

市場では「長期金利3%は通過点に過ぎない」(大手銀行)との声もくすぶる。年末に​かけ上昇基調を強めれば、想定以上に利払い費がかさみ、政策経費を圧迫しかねない。

(山口貴也 編集:久保信博)