コラム:米アルミ産業、ビッグテックとの電力争奪戦で劣勢 工場閉鎖続く 20-Feb 16:11

トランプ米政権はアルミニウムに50%の輸入関税を課したが、国内でアルミ製錬所が閉鎖される流れを食い止めることはできず、アルミの一次生産工場はさらに1カ所減ってわずか5カ所となった。

センチュリー・アルミニウム(CENX.O)は、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー価格が高騰した2022年にケンタッキー州ホーズビル製錬所の生産を停止した。電力価格が落ち着けば1年以内に操業を再開できると見込んでいたが、電力価格は下がらず、この製錬所をデジタルインフラのテラウルフ(WULF.O)に売却した。

アルミ製錬所は莫大な電力を消費し、最新鋭工場の消費量はボストン規模の都市を上回る。データセンターも大量の電力を必要とするが、長期的な電力供給を巡る争いではビッグテックの方がより高い電力価格を支払う態勢が整っている。

<生産能力減少止まらず>

トランプ米大統領は昨年、アルミの輸入関税を50%に引き上げ、数十年にわたって続く国内の一次生産能力縮小の流れを食い止めることを目標に掲げた。しかしこれまでのところ成果は、センチュリーがサウスカロライナ州マウントホリー製錬所で年間5万トンの生産能力を再稼働させた案件に限られている。再稼働にあたり輸入関税が後押しになったのは確かだが、地元電力会社との現行電力供給契約の延長の方が、むしろ重要だった可能性が高い。同工場は26年半ばまでにほぼフル稼働の水準に戻り、年間22万トンを生産する見通しだ。

将来に向けて有望視されているのは、オクラホマ州に建設が予定されている最新鋭のグリーンフィールド製錬所だ。この工場はエミレーツ・グローバル・アルミニウムとセンチュリーの合弁事業で、出資比率はエミレーツが60%、センチュリーが40%。生産能力は年間約75万トンを予定し、両社は最近、予備調査のために米エンジニアリング大手ベクテルを選定した。

オクラホマ州は電力の生産量が消費量の3倍という利点を持つ。しかし新工場向けの電力供給契約はまだ締結されておらず、仮に今年末までに予定通り建設を開始できたとしても、出荷開始は30年になる公算が大きい。

<失われる生産余力>

ホーズビル製錬所の恒久閉鎖により、オクラホマ州の新製錬所が稼働を始めるまでの数年間は、供給の不足分を補うための再稼働が可能な生産余力が大幅に減少する。

ホーズビル製錬所の生産能力は年間25万2000トンと、国内の製錬所としては2番目に大きく、しかも航空宇宙や防衛分野で使われる高純度アルミの重要な供給源でもあった。

アルコア(AA.N)
は、インディアナ州ウォリック工場で年間5万4000トンの生産ラインを1本休止しているが、再稼働を急ぐ様子はない。再稼働には約1億ドルの費用と数年の期間が必要で、「現時点では再開の可能性は低い」とウィリアム・オプリンガー社長兼最高経営責任者(CEO)は先月の25年第4・四半期決算説明会でアナリストに語った。

残るのはミズーリ州ニューマドリード製錬所で、この工場は18年に再稼働したが24年に再び閉鎖された。生産能力が年間26万3000トンの同工場は関税によって再開への期待が高まっているが、ウォリック工場と同様に再開には費用と時間がかかる。オーナーのマグニチュード・7・メタルズは意向を明らかにしていない。

<関税は継続か>

米地質調査所によると、米国は昨年、アルミ消費の60%を輸入に頼っていた。オクラホマ州の製錬所で実際に生産が始まるまで、この状況が大きく変わることはないだろう。

また、トランプ政権は高率の輸入関税を後退させる構えは見せていない。ホワイトハウスは、関税率を引き下げたり適用除外を拡大したりする可能性があるとの報道を「根拠のない憶測」として退けた。

政権当局者によると、トランプ氏は「国家および経済の安全保障に不可欠な国内製造業、特に鉄鋼とアルミの生産を再活性化することについて、決して妥協しない」考えだという。現在は多様なアルミ製品が関税対象となっているため、多少の調整はあり得るが、大幅撤回の可能性は極めて低い。その結果、今後数年間にわたり米消費者はアルミに高い価格を支払うことになりそうだ。

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で取引される中西部アルミの割増金(プレミアム)に関税に影響が見て取れる。現在のプレミアムはロンドン金属取引所の現物価格に1トン当たり2290ドルを上乗せした水準で、基本価格にプレミアムを合わせた「オールイン価格」は1トン当たり5300ドルとなっている。

プレミアムがこれほど大きくてもホーズビル製錬所を救えなかったという事実は、「安い電力」 を巡るビッグテックとの競争がいかに激しいかを物語っている。そして今のところ、AIはアルミ産業よりも電力争奪戦で優位に立っている。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)