世界の目は、ロシアとウクライナの紛争終結をめぐる交渉の曲折にくぎ付けになってきた。だが投資家にとっての本当の焦点は、その「次」にある。トランプ米大統領が首尾良く休戦に持ち込むことができれば、大規模な復興への投資ブームがすぐに始まる可能性がある。
戦争終結を巡る当事者のさまざまな駆け引きはほぼ毎日、ニュースの見出しを飾っている。トランプ氏はどんな条件であってもとにかく一刻も早い戦争終結を望んでおり、ロシアのプーチン大統領は戦場での膠着状態を勝利に転換しようと画策。ウクライナのゼレンスキー大統領は領土の一体性確保への戦いを続けようとしている一方、欧州の同盟諸国はロシアのより幅広い脅威が域内に及ぶのを防ぐ構えだ。
しかし、こうした報道の渦中で、停戦が実現した場合にウクライナが必要とする投資については、ほとんど語られてこなかった。
ウクライナの民間インフラと経済は過去4年間で深刻な打撃を受け続けた。世界銀行は2025年11月、これらの損害に関する最新の調査を開始し、来月に結果を公表する。24年末時点の見積もりに基づくと、直接の物理的被害額が1760億ドル(約27兆6320億円)で、これに失われた生産やコスト増大に起因する経済的被害額として最大5890億ドルが加わる。足元で戦争が新たな年に突入した以上、そうした被害額は増える一方となるだろう。
ウクライナの復興にかかる費用は向こう10年で約5240億ドルと予想され、資金は主に欧州連合(EU)と民間セクターが負担する公算が大きい。EUは既に、支援の見返りとして欧州企業が復興関連契約の大半を受注することを期待する姿勢を示した。ただ米政府も同様の条件を提示し、ウクライナの復興投資の資金を米企業との契約につなげようとしそうだ。
<注目すべきセクター>
ウクライナの民間企業は、支援国から得た資金のうち1400億ドルを投資に利用する見込みだ。これを別にした外国からの投資はエネルギー関連インフラ、住宅、交通インフラという3つのセクターに集中する公算が大きい。
ウクライナのエネルギーシステム再構築はもう始まっており、電力網の修復と新たな風力・太陽光発電施設建設に力が注がれている。
同国は、依然としてロシアによる将来の侵略に対して脆弱な国内のエネルギーシステムの強じん化を進めるだろう。その意味で政府は、分散化された再生可能エネルギー技術へ軸足をより傾けるかもしれない。
ロシアからの1回の攻撃でも、国の電力の大きな部分を賄う原子力やガス火力の発電所は機能停止に追い込まれうる。だが同等の風力・太陽光の容量を破壊しようとすれば、数十カ所の拠点を壊さなければならない。そのため戦争終結後の早い段階で恩恵を受けるのは、再生可能エネルギーインフラを建設する企業になり得る。
もっとも25年にドイツのインフラ投資計画を通じて、ハイデルベルク・マテリアルズ(HEIG.DE)やホルシム(HOLN.S)といった多くの欧州のセメントメーカーと、シーメンス・エナジー(ENR1n.DE)などの風力・太陽光発電設備企業は大きな追い風を受け、バリュエーションは既に高まってしまった。
実際、こうした分野の企業は「UBSウクライナ復興指数」の構成比で大きな割合を占め、同指数は2025年に50%超上昇した。
しかし、UBSの指数の主力銘柄ほどは評価が高くない欧州企業にも、復興需要を取り込む余地がある。
例えばオーストリアのウィーンベルガー(WBSV.VI)はレンガから水道管まで幅広く製造し、ポーランドやハンガリーといったウクライナの近隣に工場を持つ。同社は水インフラだけでなく、ウクライナ東部の住宅復興においても主要なサプライヤーになってもおかしくない。
オーストリアの建設最大手シュトラバグ(STRV.VI)も有利な立場にある。同社の中核事業は道路、橋りょう、鉄道の建設で、重要なのは18年までウクライナで事業を展開していたという実績だ。
シュトラバグは、ロシア新興財閥のオレグ・デリパスカ氏が株式25%を保有していたためロシア企業と見なされ、ウクライナから撤退を迫られた。それでも18年以降、デリパスカ氏の持ち分を減らす措置を講じ、ウクライナ市場への再参入に備えている。
過去1年のシュトラバグの値動きはUBSの指数全体よりも堅調で、指数の主要構成企業の多くと比べて増益ペースはより急速な半面、バリュエーションは割安だ。
もちろん停戦合意が成立する保証はなく、戦後のウクライナのビジネス環境がどうなるかはなおはっきりしていない。
しかし投資家が26年、ウクライナにおける「戦後」をより重視するようになるとともに、復興が欧州企業を巡る投資テーマの主役の座につく公算が大きい。
(本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)