ロシアの石油生産者は、今後数カ月中に大幅な減産を余儀なくされる可能性がある。トランプ米大統領と欧州諸国からの圧力が強まり、ロシアの輸出が制限されて貯蔵庫の容量もいっぱいになるためで、同国の戦時財政をさらに圧迫しそうだ。
ロシアの原油輸出はここ数年、西側の制裁厳格化や欧州による購入急減にもかかわらず、おおむね安定していた。ロシアは海上輸送で輸出する原油の大半を中国、インド、トルコへ振り向けることに成功。これは旧式の無保険タンカーからなる「影の船団」を頼りに制裁を回避するとともに、大幅な値引きを行ってきたためだ。
しかし、その耐久力にきしみが出始めている。トランプ氏が制裁を強化し、ロシア産原油購入への制裁としてインドに関税を課したことで、輸出はここ数カ月間に減速した。
<海上輸出の減少>
欧州連合(EU)が先月、ロシア産原油を原料とする燃料の輸入禁止措置を発効したことで、需要も落ち込んでいる。
分析会社Kplerによると、ロシアの海上輸送による原油輸出量は12月に日量380万バレルだったのが、1月には340万バレルに減少し、2月は280万バレル程度で推移している。
同時に、船舶上に保管されているロシア産原油は最近数カ月で1億5000万バレルを上回って過去最高に達し、多くのタンカーが航行速度を落としている。これらは需要減退を示す兆候だ。
欧州委員会は、ロシアの海上原油輸出を支える事業を包括的に禁止する措置を提案している。これは従来の制裁を大きく超えるもので、ロシアをさらに圧迫するだろう。
<インドが購入抑制>
ロシア産原油輸出への圧力は、今後数カ月で一段と強まる見通しだ。昨年は海上輸送分の最大の買い手だったインドが、米国との貿易協定の一環として購入を制限する準備を進めているためだ。トランプ氏は、インドが協定に基づきロシアからの輸入停止に同意したと述べているが、インド政府当局者はその計画を確認していない。
Kplerによると、インドは昨年、ロシア産原油の海上輸送輸出量の約半分に相当する日量約170万バレルを購入した。輸入量は1月に同110万バレルまで減少。2月はわずかに回復する見込みだが、3月以降は急減が予想されている。
ロイターの報道によると、インドの石油大手3社はロシア産原油の購入を中止した。ただ、小規模な製油企業などが購入を続けるとみられ、インドの購入が完全にゼロになる可能性は低そうだ。
中国の独立系精製企業も、行き場を失ったロシア産原油を一部吸収する可能性があるが、その余地は限られる。ロシア産原油は昨年既に、中国の原油輸入総量(日量1150万バレル)の約5分の1を占めており、中国は歴史的に特定の供給国への過度な依存を避ける傾向がある。
<サプライチェーンの反応>
こうした購入減速は、ロシアの石油物流全体に負の連鎖反応を引き起こしている。「影の船団」の航路長期化によりタンカーは足止めされ、洋上で原油を保管するための船舶が確保しにくくなっている。その結果、生産者はより多くの石油を国内の貯蔵施設に回さざるを得ない。
ロシアの陸上貯蔵能力の全容は、政府がデータを公開していないため不明確だが、余力は限られているようだ。Kplerのアナリストの分析によると、陸上の石油在庫は約1600万バレルで、貯蔵容量の約51%に達している。
ロシアは必要に応じて、広大なパイプライン網の一部を貯蔵に転用することも可能だが、そのバッファーですら不十分かもしれない。
ロシアの原油生産は日量約930万バレルで、その約半分が輸出向けだ。このペースが続き、輸出が圧迫されたままなら、陸上貯蔵施設はすぐに満タンになり、生産者は減産を余儀なくされる可能性がある。
<予算を圧迫>
ライスタッド・エナジーの地政学分析責任者ホルヘ・レオン氏によると、この結果ロシアの石油生産量は3―5月に最大で日量30万バレル減少しかねない。
石油・ガス収入はロシア政府の主要な財源であり、連邦予算の歳入の約4分の1を占めている。2022年のウクライナ侵攻以来、膨大な国防費によってロシアの財政はすでに逼迫している。
財務省のデータによれば、原油価格の下落が響き、1月の国家の石油・ガス収入は前年同月比で半減して2020年7月以来の低水準に落ち込んだ。
生産減少と輸出価格のさらなる値引きが重なれば、ロシアの石油収入は一段と縮小し、財政への圧力はさらに強まる。 泥沼化するウクライナ紛争が4年目に入る中、これこそが欧米諸国の狙いだ。
(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)