日本政府の原油先物市場への介入を巡り、思惑が広がっている。前例のない措置で介入の手法もはっきりしないことから、市場では実現可能性を懐疑的に見る向きも多い。原油市場の動きは中東情勢を反映したものでもあり、むしろ足元の原油高・ドル高に対する「手詰まり感」が透けるとの指摘もある。
<原油市場は投機的か>
関係筋によると、日本の通貨当局は原油先物市場への介入も視野に複数の金融機関に聞き取りを実施している。この報道が伝わった23日以降、金融市場では「現実的ではない」(大手銀ディーラー)と懐疑的な見方が広がっている。
介入の検討を政府は正式に認めたわけではない。ただ、片山さつき財務相は原油先物相場について「投機的な動きが為替にも影響していることが広く言われている」と指摘、為替が国民生活や経済に与える影響を踏まえ「いかなる時もあらゆる方面で、あらゆる場面で万全な対応」を取る構えを示している。
政府は為替相場に影響を及ぼす原油市場の動向が投機的だとして原油市場の動きを抑止することで、円安是正につなげる考えとみられるが、市場ではとりわけ、足元の原油先物相場の値動きが「投機的」と言えるか疑問の声が多く、介入の「大義」は立ちにくいとの見方がある。
米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉報告など、ニューヨーク原油先物の取り組み状況を踏まえると、足元で「投機筋のポジションは積み上がり方向ではあるものの、異常なレベルとまでは言えない」とニッセイ基礎研究所の上野剛志・主席エコノミストは指摘する。
加えて、原油輸送の要衝となるホルムズ海峡の実質的な封鎖状態という原油供給の歴史的な制約状態が背景にあり、一方的に投機的と断定するのは難しい面もある。
マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘共同代表は、足元の原油先物は方向性が分からない中で取引が手控えられ、商いが薄い中で値が飛びやすいと指摘する一方、「需給バランスが劇的に変わるようなイベントが生じている中で投機と片付けるのは雑な議論にみえる」と話す。
<実現にハードル>
原油先物相場への介入手法についても懐疑的な見方が出ている。仮に、為替相場への影響が大きいとみられる期近物の先物を売り建てることで価格押し下げを狙う場合、先物の価格が売りつけた価格より上昇するケースでは、買い戻す際の損失は論理的に無限大に膨らむリスクを負うことになる。
高市首相は1月、円安で外国為替資金特別会計(外為特会)の運用益が「ほくほく状態」と発言したが、三菱UFJモルガンスタンレー証券の植野大作氏は、外貨準備が巨額の為替介入で減少する場合には一般会計にしわ寄せが生じ得ると指摘する。
市場では原油価格を通じて間接的に働きかけるよりも、直接的に為替に介入する方が合理的との指摘が聞かれる。円安抑制に向けたドル売り介入の場合、過去に安値で買ったドルを高値で売ることができる。
前例のない手法を模索する政府の動きに対し、手詰まり感が透けてみえるとの声も市場では聞かれる。原油先物への介入検討の報道については「ドル売り介入しにくい事情があるのではないかと勘繰られかねない」(三菱UFJモルガンスタンレー証の植野氏)との声も出ている。