インドネシアのプラボウォ大統領は、先月下旬に辞任したペリー・ワルジヨ氏の後任の中央銀行総裁に総裁代行を務めるデストリ・ダマヤンティ氏(62)を指名した。大統領府報道官が10日、明らかにした。
ワルジヨ前総裁は先月、「個人的な理由」で辞表を提出した。すでに財政の健全性や中銀の独立性を巡る懸念が広がっていた中での突然の中銀総裁辞任で投資家の不安が一層高まった。
ダマヤンティ氏は、エコノミストとしてキャリアをスタートさせ、シティバンクや国営マンディリ銀行で勤務。2015年から19年にかけて預金保険機構の監査役会メンバーを務め、19年に中銀の上級副総裁に就任した。同氏の総裁指名のニュースを受けて、ルピアは対ドルで6月18日以来の高値を付けた。
大統領府の報道官は記者会見で、プラボウォ氏がダマヤンティ氏を総裁に指名したと述べた。上級副総裁を含む中銀理事会メンバーの人事案を国会に提出したと明らかにした。国会は、1カ月以内に人事案の諾否を決定する。現職大統領の中銀総裁人事案の否決は08年以降ない。
次回の金融政策決定会合は、8月18─19日に開催される。
<政策の継続性に期待>
DBSのエコノミスト、ラディカ・ラオ氏は「ダマヤンティ氏の指名は、中銀と国内金融市場での豊富な経験を考慮すると、市場に好感される可能性が高い」と述べた。「同氏は通貨安定の必要性を明確に強調しており、政策の連続性を反映すると予想される」とした。
トリメガ・セクリタスのチーフエコノミスト、ファクルル・フルビアン氏は、ダマヤンティ氏の金融分野での長いキャリアに言及し、「成長志向のニュアンスを持つ、実利的で安定志向の政策立案者」と見なされていると指摘した。
インドネシア中銀は、プラボウォ氏の経済成長加速目標の支援圧力を受ける中で、インフレ抑制とルピア相場の管理という課題への対応を迫られてきた。
今年、ワルジヨ体制下で政策金利を1%引き上げ、ルピア支援に向け為替ヘッジに関する優遇措置を導入し、資本流入策として高利回りの中銀短期証券を発行した。
フルビアン氏は「引き締め局面における中銀の対応は、単にタカ派志向ではなく、政策の信頼性を回復し期待を安定させる必要性に迫られたものだ」と指摘。その上で、ダマヤンティ氏は、市場環境を鑑みて必要なら断固とした対応を取ることも辞さないと考えられるものの、引き締め環境を必要以上に維持することはないとの見方を示した。
<中銀の独立性が引き続き焦点>
ワルジヨ氏の突然の辞任の背景には、経済成長戦略を巡るプルバヤ財務相との深刻な対立があったとされる。関係者によると、プルバヤ氏は流動性は潤沢であるべきという立場で、為替相場の安定を重視する中銀の方針と対立したという。 もっと見る
今月、ダマヤンティ氏はプルバヤ氏との共同記者会見で、銀行間の不均等な流動性配分に対処し、融資増加効果を意図した新たな措置を強調した。
ペルマタ銀行のチーフエコノミスト、ジョスア・パルデデ氏は、中銀の独立に対する真の試練はダマヤンティ氏の総裁人事が承認された後に訪れると指摘。中銀が拙速な利下げや財政ファイナンスに動けば、インドネシアのリスクプレミアムが上昇すると警告した。
「ダマヤンティ氏は政府・財務相と強力な協力関係にあると見られている。それは財政政策と金融政策の間の摩擦を減らす点では強みになる。だが、市場は協調と従属を明確に区別するだろう」と述べた。