コラム:「中国ショック2.0」が生む、中国企業の勝ち組と負け組 10-Aug 11:24

中国は輸出によって景気低迷から脱却しようとしており、第二次「中国ショック」を引き起こしている。この戦略は海外で貿易摩擦を引き起こす一方、国内では新たな受益者を生み出している。

ここ数カ月、中国は堅調な対外セクターと低迷する国内経済との分離が鮮明になっている。

7月の輸出は前年同月比24%増え、貿易黒字は1130億ドルと、6月と同様に高水​準となった。2026年の通年でも再び1兆ドルを超えそうなペースだ。対照的に、第2・四半期の国内総生産(GDP)成長率は4.3%と失望を誘い、小売売上高の伸びも5月がマイナス0.6%、6月がプラ‌ス1.3%と低調だった。

この分離は偶発的ではなく、中国政府の政策選択を直接反映している。

世界最大の輸出国である中国は過去10年間、先端製造業での優位性獲得に努め、電気自動車(EV)、太陽電池、バッテリーなどの製品で巨大な市場シェアを確立してきた。

欧米の政策立案者らはこの現象を「中国ショック2.0」と名付けた。中国が製造業輸出国として台頭し、欧州や米国の産業を揺るがした2000年代初頭の再来ということだ。各国政府は現在、補助金に支えられた中​国製EVやグリーンテック製品の輸出の波が、欧米、特に欧州の生産者に競り勝ち、製造業の雇用を改めて脅かしていると主張する。

欧州は、セクター別の関税、より厳格なサ​イバーセキュリティー要件、そして中国に対する人民元切り上げ要求を組み合わせる対応を採っている。同時に、トランプ米大統領は⁠関税をさらに引き上げている。

海外でこうした緊張が高まる中、中国政府は国内消費拡大策を限定的にしか講じていない。国内の食品配達、EV、太陽光発電部品などの分野で利ざやを圧縮​している激しい価格競争、いわゆる「内巻」現象を抑えるため、政府は「反内巻」政策を実施してきたが、成果は限られている。

そのため中国企業は適応を余儀なくされている。収益性の高​い海外での収益源が国ごとの分断によって損なわれないよう、企業は主要な海外市場での直接生産を増やすことで、貿易障壁を回避し、現地で支持を獲得し、地政学的な混乱からサプライチェーンを絶縁させようと努めている。これもまた自然発生的な展開ではなく、「グローバリゼーション・フェーズ3.0」という政策の一環だ。

この新たな方針は、中国で新たな勝者と敗者を生み出す可能性がある。

<国を代表する企業>

こうした政策転​換によって最も恩恵を受けそうな企業は無論、輸出関連分野に集中している。

2024年に中国が世界の知的財産の65%を占めたEVや車載電池のサプライチェーン企業が、その中に含まれる。EVのBYD(比亜迪)(1211.HK)や吉利汽車(0175.HK)、車載​電池のCATL(寧徳時代新能源科技)(300750.SZ)は巨大な世界市場シェアを誇るだけでなく、世界各地に分散された製造拠点とサプライチェーンを有している。

家電の巨頭、美的集団(000333.SZ)や海爾智家(ハイアール)(600690.SS)も東南アジア、中南米、米‌国、欧州にお⁠いて研究開発(R&D)、製造、流通を現地化し、それらを完全に統合した国際的システムを運営している。

その他の潜在的な勝者としては、欧米に代用製品がほぼ存在しない重要な技術部品の企業が挙げられる。光トランシーバーを製造する中際旭創(300308.SZ)や新易盛(エオプトリンク)(300502.SZ)などだ。

しかし、これらの企業の一部は、エスカレートする貿易紛争の標的となる可能性もある。例えばロイターによると、ホワイトハウスは中国製のデータセンター・コンポーネントの新モデルについて、米国への輸入禁止を検討している。

<人民元切り上げ要求>

輸出不均衡に対する欧米からの批判への対応としては、人​民元切り上げの容認が含まれる可能性があり、​その場合には別の勝者企業グループが⁠生まれるだろう。

過去10年間で見ると、欧州の対中国貿易赤字は2倍以上に膨らんだにもかかわらず、人民元は対ユーロで6%下落している。米国の対中貿易赤字はこの間10%拡大し、人民元の対ドル相場は2%下落した。この構図は人民元の過小評価の根深さを物語っており、今後是正される余地がいかに大き​いかが分かる。

人民元が対ユーロで切り上がった場合に明白に恩恵を受けるのは、多額のユーロ建て負債を抱える企業であり、人民元が​急伸すると負債は縮小する。⁠中国石油化工(シノペック) (600028.SS)などの大型の国有企業が当てはまる。

一方、対米ドルで元高になれば中国の「ビッグスリー」国有航空企業である中国国際航空(601111.SS)、中国南方航空(600029.SS)、中国東方航空(600115.SS)に直接の恩恵をもたらす可能性がある。3社は莫大なドル建て負債を抱える。

<逆風に注意>

ただ、新しい環境下で勝ち組になりそうな企業も、逆風には注意が必要だ。

まず、好調な輸出は必ずしも株高に直結しない。また、外生的なショックに⁠よって政策転​換によるプラスの影響が抑えられる可能性もある。例えば中国の航空会社株は、米国・イスラエルとイラン​の戦争の影響で2月以降急落している。

第一次「中国ショック」は世界の産業秩序を再編し、グローバリゼーションが進む時代の支柱となった。今回、中国企業は提携強化や貿易障壁の低下に頼ることはできず、代わりに分断、紛争、​そして主要各国からの強い抵抗によって特徴づけられる環境に直面することになるだろう。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)