世界最大の温室効果ガス排出国である中国の2025年の再生可能エネルギーなどのクリーンエネルギーによる発電能力は、初めて化石燃料発電を逆転した。これは中国の極めて重要なエネルギー源の転換となる。
グローバル・エネルギー・モニター(GEM)のデータによると、25年時点で中国の稼働中のクリーンエネルギー発電能力は1494ギガワット(GW)に達し、石炭や天然ガスなどの化石燃料による発電能力の1420GWを上回った。
中国の発電設備の51%をクリーンエネルギー発電が占めるようになり、ブラジルやフランス、ドイツと並んでクリーンエネルギーを主力電源とする経済大国の仲間入りを果たした。
その対極にあるのが米国で、25年時点で稼働中の化石燃料発電能力がクリーンエネルギー発電能力を233GW上回る。
GEMのデータによると、インドとサウジアラビア、ロシア、インドネシアも化石燃料発電への依存度の高い経済大国となっている。
トランプ米政権は再エネへの連邦政府補助金を削減し、天然ガスと石炭火力の発電のさらなる拡大を後押ししている。
世界の二大経済大国のエネルギー政策がかい離していることは、エネルギーの未来に対する見解が根本的に異なることを浮き彫りにしている。中国がよりクリーンな発電を推進する一方、米国は化石燃料への依存度強化を主導しているのだ。
<太陽光発電による変革>
中国では2015年以降の過去10年間に全ての電源の発電能力が増加した中でも、太陽光発電の発電能力が16.54倍と最も大きく伸びた。
GEMのデータによると、25年の中国の発電能力に占める太陽光発電の割合は18.3%と過去最高を記録。15年の2.4%から大幅に上昇した。
太陽光発電能力の急増は、中国のエネルギーシステムにクリーンエネルギーを追加したことにとどまらない。石炭火力発電の割合が15年に64%を占めていたのが、25年には過去最低の42.7%まで低減した。
中国で太陽光発電は現在、石炭に次いで2番目の発電能力を占めている。国内での太陽光発電システムの部品生産が近年大幅に増えたことにより、20年代後半にさらなる成長が見込まれる。
<米国は逆戻りも>
米国のクリーンエネルギーの発電能力は2025年に520GWとなり、15年の約300GWから74%伸びた。
一方、25年の化石燃料の発電能力は753GWと、15年の約775GWから約3%縮小し、老朽化した石炭火力発電所が閉鎖された。
米国の総発電能力は15年以降に18%拡大し、25年には過去最高の1272GWに達した。
データセンターや、人工知能(AI)向けのアプリケーションを稼働させるための電力供給増強が急務のため、米国の発電能力は今後数年間にさらに急増する見込みだ。
ただし、トランプ政権が再エネに対する優遇措置を廃止したことを受け、電力会社やエネルギー関連企業は天然ガスによる発電を大幅に増強することが予想される。
GEMのデータによると、米国で建設中のガス火力発電所の発電能力は1年前から倍増し、建設前段階では5倍に急増した。
このガス火力発電の建設ラッシュが完了後、米国の化石燃料発電の総発電能力はさらに増加する。発電能力に占めるクリーンエネルギーの割合は15年に約28%だったのが、25年には過去最高の41%に達したが、急増するガス火力発電によって逆戻りする可能性がある。
米国の電力会社が再エネよりも化石燃料を優先する姿勢は、米国の電力システムをサウジのような化石燃料依存型へ確実に近づけるだろう。
サウジのクリーンエネルギー発電能力はこの10年間に急拡大した。特に太陽光発電の発電能力は25年に11GW超となり、20年の0.5GW未満から跳ね上がった。
しかし、サウジの電力供給の約90%は化石燃料に依存している。石油資源が豊富なサウジは今後数十年間にわたり、化石燃料がエネルギーシステムの主要な柱であり続ける見通しだ。
米国も同じく化石燃料に依存している。米国は世界最大の天然ガス生産国および輸出国であるため、埋蔵ガスを活用した電力システムが続くことが予想される。
このガス中心の政策は、トランプ氏の短期的な「エネルギー支配」の政策と合致するかもしれない。ただし、今世紀末までに大部分の経済圏で稼働していることが見込まれるクリーンエネルギー網の構築で米国が後れを取る結果をもたらすだろう。
(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)