アングル:日米協調介入、「温度差」リスク意識 円安の真因変わらず 03-Aug 16:57

日米が円買い介入に踏み切ったことで、市場ではさらなる介入への警戒感が高まっている。円買いの協調介入は1998年のアジア危機以来で、背景には円安と円金利高を通じた米金利上昇への米国側の警戒もあるとみられている。一方、円安の真因とされる日銀の「後手」リスクや財政悪化懸念は変わっていない。​介入は対症療法でもあり、市場は日米当局の協調介入への温度差を意識しつつ、その持続力を見極めようとしている。

3日朝、日米当局がそ‌れぞれ協調介入に関する声明を発表した。日米の協調介入は2011年の東日本大震災年以来15年ぶり、「円買い方向」に限れば28年ぶりとなる。

声明に身構えていた市場では、声明発表後にいったんは157円前半から後半に上昇する場面があったが、午前9時半ごろに再び円高方向に反転し、一時155円前半まで2円超下落した。市場では追加介入の可能性が取りざたされている。

関西みらい銀行の石田武ストラテジストは、日米協調​介入について「まだ終わりではないことを強調するなど、少なくとも前回4月末の介入の時よりも本気度を感じる。今回は事前の口先介入があまりなかった​ので、ここまで準備していたとはサプライズ」と指摘する。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは「⁠数週間は協調介入的な動きが出てきやすい。メッセージ性が高く、しばらくはドルの上値は重いだろう」との見方を示す。

<大規模介入の持続力見極め>

ただ、協調介入の持​続力には懐疑的な見方もある。

米国はドルの発行国であり介入原資は無限とされるが、英フィナンシャルタイムズ紙によると、今回はユーロ売り・円買い介入を行っており、​ドル売りに伴う米国債の売却を避けたい事情も透ける。ニッセイ基礎研究所の上野剛志主席エコノミストは「米国が米国債を売りたくないなら、介入原資にできるのは保有外貨の範囲に限られかねない」と指摘する。

日米当局は、米国の「外国・国際通貨当局向けレポ・ファシリティ(FIMAレポ・ファシリティ)」の活用によるドル流動性の確保に言及しており、大規模介入の持続力を印象付​ける狙いがあったとみられている。

SBI FXトレードの斎藤裕司エグゼクティブアドバイザーは「実際に使うかどうかは別だが、活用するなら、想定される以上の大規模介入を​続けても問題はないだろう」と話す。いずれは返す必要があるが、ロールオーバー(借り換え)でき、すぐ返す必要はないといい「債券市場も気遣っての動きだろう」との見方だ。

ニッセイ‌基礎研の上野⁠氏は「多額の介入を続ければ、介入原資の限界はやはり意識されかねない」とみている。借りるドルはいずれ返す必要があるほか、担保の米国債を手放す場合、市場で直接売らずとも、米財務省は再発行を迫られて結局、需給は緩むだろうとの見方だ。

<米国との蜜月関係が変数に>

今回の介入は米国を巻き込む形で、いわば「より効能の高いクスリ」を処方したとみることができるが、根本的な原因が解消されるわけではない。サクソバンクのチーフ・インベストメント・ストラテジスト、チャル・チャナナ氏は「金利​差の縮小や日本の財政見通しに対する信​認の強化といった裏付けがなければ、⁠当局の支援が薄れた時点で、円は再び徐々に押される展開になり得る」と指摘する。

トランプ米大統領は2日、米国が日本の円相場下支えを支援しているのは友好の証で、世界経済を支援するためだと述べた。三菱UFJMS証券の植野氏は「日本は米国の助けがないと円安を止め​られない国になりつつある印象を受ける」と話す。市場では、当然、見返りを求められるとの見方が優勢となっている。

高​市政権による日銀の利⁠上げ容認が一つの方法となるとSBIFXの斎藤氏はみており「米国としてはそのための時間稼ぎとしての協調介入に乗り出したということだろう」との見方を示す。

市場では日銀による早期利上げ織り込みが進んでいる。東短リサーチと東短ICAPによるオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)気配中央値によると、9月の日銀金融政策決定会合での利上げ確率は3日時点で52%と、7月31日の31%から急速に高まった。

米国⁠との蜜月関係​の持続力は変数となり得る。ニッセイ基礎研の上野氏は、中長期的には温度差が生じるリスクがあ​るとみる。「米国の金利上昇リスクが後退しても円安が止まらないような局面が訪れた場合、米国が協力関係に距離を置き始める可能性がある」と話す。

目先の焦点は、週末の米雇用統計。上下いずれの方向でも事前予想​から乖離する結果なら、ドル/円のボラティリティ(値動きの大きさ)が高まりかねないと市場は警戒している。