アジア太平洋地域の政策立案者たちは、他地域よりも激しく、また早く押し寄せているエネルギーショックから自国経済を守ろうと急いでおり、新型コロナウイルス禍以来となる最も困難な試練に直面している。
アジアはホルムズ海峡を通過する原油の約80%を購入しており、JPモルガンのコモディティ・アナリストによると、供給不足は4月から5月にかけてさらに悪化するだろう。
フィリピンの首都マニラでは色鮮やかな改造ミニバスのジープニーの運転手たちが、既に3倍に跳ね上がったディーゼルエンジン燃料価格に直面する。ベトナムではジェット燃料が不足しつつあり、韓国の大手化粧品メーカーは有名なスキンケア製品の容器を製造するためのプラスチック樹脂を世界各地に求めている。
米国・イスラエルとイランとの戦争がアジアに及ぼす影響は世界中の他の地域と同様に、インフレの上昇と経済成長の鈍化という見通しだ。
アジア通貨は激しい売りを浴びせられ、世界で最も下落率の高い通貨グループとなっている。こうした状況はアジア通貨危機の記憶を呼び起こし、政策立案者に利上げ、外貨準備の取り崩し、あるいは一段の通貨下落の容認という不愉快な選択を迫る。
インドルピー、インドネシアルピア、フィリピンペソは今月、ドルに対して過去最安値を更新し、円と韓国ウォンも大幅な安値を記録した。
香港ナティクシスのアジア太平洋担当チーフエコノミストのアリシア・ガルシアエレロ氏は「中央銀行には、何も打つ手がない。インフレ圧力だけでなく、既にあまりに多く利下げしてきたために、これ以上の利下げは不可能で、経済は急落するだろう」と述べた。
3月に数少ない「安全資産」となったドルはアジア通貨の一部に対して歴史的な上昇を見せ、ウォン、フィリピンペソ、タイバーツに対して4%余り、ユーロに対して約1.5%いずれも上昇した。
<容易な選択肢存在せず>
単純な解決策は全く存在しない。というのも、より多く石油を輸入する以外の選択肢はこの逼迫状態を実際に解消できず、その影響が既にプラスチックや肥料の価格に波及しているからだ。
高金利で対応すれば、最も支援を必要としている時期に経済を失速させるリスクがある。燃料補助金の支給は巨額の費用がかかり、新興国や予算的に苦しい国はそのような動きをすれば債券投資家から否定的に捉えられかねない。外国為替市場の直接的な介入も、気まぐれな外為市場で多大なコストとリスクを伴う可能性がある。
米・イスラエルがイランを攻撃して中東紛争が始まった2月下旬以来、オーストラリアは利上げしたが、アジア太平洋地域の他の金融当局は口先介入や為替介入、非伝統的なツールに頼って、急騰するガソリン価格の抑制と金融市場の安定化に努めている。
日本は円相場が約40年ぶりの低水準に迫る中、改めて為替介入の可能性を示唆した。一方、フィリピンは国家エネルギー非常事態を宣言し、為替介入を控えて通貨を過去最安値まで下落させ、想定外の政策会議を先週開催して行動の用意があると警告した。
HSBCの香港担当アジアチーフエコノミストのフレッド・ニューマン氏は「このような危機にどのように対処するべきなのか、明確な設計図は存在しないと思う」と述べた。
アジアのほとんどの国は健全な水準の外貨準備を保有しており、約30年前に資本流出を招いたような固定相場制やドル建て債務と類似点がない。
しかし、為替市場に対する直接介入は、安全資産としての需要からドル高となっている状況で無益に終わる可能性が高く、中央銀行の当局者たちは創意工夫を凝らす必要があるとアナリストは指摘する。
HSBCのニューマン氏は「敏しょう性が政策立案者に必要とされている。予定外の会議を開いたり、市場対話をより頻繁にしたりすることがたぶん役に立つだろう」と述べた。