中国の市場監督当局は5年前、アリババ(9988.HK)と美団(3690.HK)を調査し、同国のハイテクセクターに対する投資家の信認を揺るがした。当局が新たな標的に選んだのは、旅行予約サイト大手の携程集団(トリップドットコム)(9961.HK)だ。
中国国家市場監督管理総局は14日、ジェーン・サン(孫潔)氏が率いるトリップドットコムに対し、市場での支配的地位を乱用した疑いで調査を開始したと明らかにした。これを受け、ニューヨークと香港に上場する同社の時価総額は約80億ドル(17%)減少した。
トリップドットコムは当局に協力する方針を示しているものの、規制当局から標的にされやすい状況にある。同業の同程旅行(0780.HK)の株式を取得するなど、同社は過去10年間にわたって買収を重ね、支配力を強めてきた。現地メディアは交通銀行国際のアナリストの推計として、トリップドットコムが2024年に国内のオンライン旅行予約市場で56%のシェアを占めたと報じている。
ビジブル・アルファの推計によれば、新型コロナ禍後の国内旅行ブームを背景に、同社の海外分を含む売上高は今年14%増の710億元(101億ドル)に達する見通しだ。さらに注目すべきは、粗利益率が今後5年間にわたり80%で推移すると見込まれている点で、10年前の72%から上昇している。
こうした強力な価格決定力は、ホテル業界や観光業界団体に加え、規制当局の反発も招いている。トリップドットコムと、アリババ、美団、京東集団(JDドットコム)(9618.HK)といったライバル企業との競争が激化する中、規制当局はすでにこの業界への調査を開始している。
先月には個人経営の事業者に対して特定のオンライン代理店1社を選ぶよう強制したり、手数料率を引き上げたり、不公平な条件を設定したりしたとして、雲南省の民泊業界団体がトリップドットコムを含む一部オンライン旅行会社を批判した。現地メディアによれば、昨年後半には地方の独占禁止当局が、トリップドットコムを少なくとも4回呼び出した。
トリップドットコムは独禁法違反により国内売上高の最大10%に相当する制裁金が科される可能性がある。シティのアナリストは、これが最大49億元(約7億ドル)の損失に相当すると試算している。ビジブル・アルファの推計では、この金額はトリップドットコムの2026年の純利益予想の23%に当たる。
より大きなリスクは、中国政府が国内の消費喚起に取り組む中で、当局が同社の巨額の利益を容認するかどうかだ。同社の好調な業績は、苦境に立たされているホテル事業者や国有航空会社の状況と対照的だ。
アリババのケースとは異なり、トリップドットコムへの取り締まりがサン氏や創業者らが中国政府の不興を買ったことに起因しているようには見えない。投資家は少なくともこの点については安心できるだろう。ある意味では、これは中国の独禁制度の運用がより予測可能なものになるとも言える。
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(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)