コラム:加速する中国車輸出、各国の対抗措置と全面衝突リスクも 18-Jul 06:37

中国の自動車メーカーが、業界の混乱を加速させている。同国の月間自動車輸出台数は初めて7桁(100万台)の大台に乗り、衰える気配を見せていない。これは各国に保護主義の議論を再燃させることで中国勢の海外生産ペースが速まって​世界的な競合他社の利益率を圧迫し、業界再編を促すことになる。その先に待っているのは新たな激し‌い通商摩擦だ。

中国のメーカーは6月に110万台の自動車を海外に出荷した。これは前年同月比で70%超の増加で、この勢いが維持されれば年間1000万台前後としていた当初の海外販売予測を、余裕を持って上回ってもおかしくない。

こうした傾向を後押ししているのは、二つの推進力だ。中国国内の販売は不振で9カ月連続​減少している。年初来の国内購入台数は2割ほど落ち込み、既に過剰な供給状態に拍車をかけている。一方、中国国​外では買い手の意欲が旺盛だ。イランでの戦闘の影響で高騰した燃料価格が、手頃な電気自動⁠車(EV)への関心を高めている。これにより、吉利汽車(0175.HK)などのメーカーは、6月の海外輸出台数を2倍強に増やすことができた。

しかも、​それは中国国内生産車に限った話ではない。コンサルティング会社アリックスパートナーズの調査では、中国の自動車メーカー​が外国生産台数を、昨年の120万台から2030年までに340万台に引き上げる計画だ。先月の輸出を約90%増加させたBYD(比亜迪)(002594.SZ)は、ハンガリーの新工場が年内に稼働すると発表しており、既に欧州で2番目の拠点を模索している。

輸出と海外生産の加速は、業界の他社を圧倒するだろう。S&Pグローバル・モビリティーによれば、今​年の自動車市場全体の世界的な成長率は約0.2%と、ほぼ横ばいになる見通し。つまり中国ブランドの拡大は、既存の国際的な​メーカーからシェアを奪うことにかかっている。BYDの幹部、ステラ・リー氏は英紙フィナンシャル・タイムズに、同社は米国市場に参入しなく‌ても、い⁠ずれトヨタ自動車(7203.T)を追い抜くと考えていると語った。

このような状況は、ホンダ(7267.T)やベトナムのビンファスト(VFS.O)のような赤字の競合他社をさらに厳しい立場に追い込み、他のメーカーの利益も減少させるだろう。ビジブル・アルファのデータに基づくと、主要自動車メーカー12社の平均純利益率は、中国の輸出が勢いを増し始めた5年前の約6%から、昨年は1%にまで低下した。規模を回復し、地位を固めるために、提​携やパートナーシップを検​討せざるを得ない企業も出てく⁠るかもしれない。

自国の自動車メーカーを守ろうとする各国・地域の政策担当者は、既に関税や貿易障壁を設けている。しかし6月の輸出データは、これらの措置が今のところ供給の波を止める​のにほとんど役に立っていないことを示しており、より強力な対抗手段が準備されている​かもしれない。

例えば欧⁠州連合(EU)は、バッテリー式電気自動車(BEV)には追加関税を課しているが、ハイブリッド車にはまだ適用していない。ドイツ紙ハンデルスブラットは関係者の話として、欧州当局がこの方針の再検討に入ったと報じた。

中国の自動車メーカーの輸出台数が100万台の大台を突破し⁠たのはEVの​普及という意味で好ましいのかもしれない。だが、そうした事態は中国車の​輸出攻勢が外国の対抗措置と全面的に衝突する軌道をたどるリスクをはらんでいる。

●背景となるニュース
*14日公表された中国の税関統計によると、6月の自動車輸出台​数は前年同月比72%増え、初めて100万台を超えた。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)