日本の金融政策はどこで決定されているのか。トレーダーからすれば、その答えはますます「ワシントン」であるように映る。
日本の10年物国債利回りは1日、30年ぶりに3%を突破した。NHKはこの日の朝、ベセント米財務長官が20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の合間に植田和男日銀総裁や片山さつき財務相と会談し、財政の持続可能性や利上げに向けた道筋を市場に対して明確に示すことが重要などの認識を示したと、米財務省高官の話として報じていた。高市早苗首相がこうした圧力戦術に屈し続ければ、日本が自らの金融政策の道筋を描く能力に対する市場の信頼は低下するだろう。
ベセント氏は8月31日、「私は市場が持っていない情報を持っている。日本政府と日銀が円高につながる措置を講じると確信している」と米CNBCに語った。
ここで問題となるのは、日銀の最終的な判断や、ベセント氏が実際に何を知っているのかではなく、同氏の発言だ。日銀が9月18日に利上げするとの市場観測を決定的なものとし、緊密な同盟国の金融政策への介入に等しい。7月の日米協調為替介入で、ユーロを売って円を支える「脇役」に徹したのとは対照的だ。
日銀の独立性を米国が侵していることに対し、高市首相はまだ声を上げていない。それはおそらく、ベセント氏が公言する円高志向が、一段の円安を食い止め、370兆円(2兆3000億ドル)規模の投資構想への野心を維持する助けになるからだろう。投資家の間では、これに伴う国債増発が再び円安を招くのではないかとの懸念が根強い。
もちろん、日本の当局者が単独路線を選び、円安がもたらすインフレコストをのむという選択肢もある。片山氏は1日、ベセント氏の利上げ要求に慎重姿勢を示した。
いずれにせよ、日本の債券市場がベセント氏の発言を綿密にフォローしているという事実は、日本政府が政策の自律性を一部手放していることの表れで、これは深刻な問題だ。なぜならトランプ米政権の狙いは、通貨を支えてもらっている国の政府の狙いと必ずしも一致するとは限らないからだ。例えばベセント氏が円買いに応じたのは、日本が単独で円防衛に動けば、保有する米国債の売却を迫られる可能性が一因と考えられる。
円相場は日米協調介入による上昇の半分を既に失った。ベセント氏は米国の限られた外貨準備を繰り返し取り崩したくないはずだ。
そう考えると、ベセント氏が8月30日のロイターとのインタビューで「タカイチノミクス」を主に株主重視の規制緩和路線と位置付けつつ、「日本は一歩引いて『アベノミクス』の成功を享受し、その流れに任せるべき」と語った理由も見えてくる。これは高市首相の看板政策である積極財政路線を書き換えようとする、あからさまとも言える試みだ。日本政府はいずれ、支援を受ければ、その見返りに相手の意向に応じる羽目になると悟るかもしれない。
●背景となるニュース
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*ブルームバーグは8月25日、財務省が、2027年度一般会計当初予算の概算要求で、利払い費や債務償還に充てる国債費を36兆6386億円要求すると報道。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)