コラム:コンサル大手揺さぶるAI、「自ら改革実践」で存在感維持か 25-Jul 07:15

「助言ほどタダで得やすいものはない」という古いことわざが今、コンサルティング業界にとって不気味な意味合いを帯びつつある。大手のアクセンチュア(ACN.N)とコグニザント・テクノロジー・ソリューションズ(CTSH.O)は、この2年間で時価総額の半分以上、計1000億ドルを失った。人工知能(AI)によってコンサルタントの専門知識が「コモディティー化」する未来が相場に織り込まれたからだ。マッキンゼーからグラントソントンに至る​全てのコンサルティング企業が今、自らAI革命を実践することで戦略・経営アドバイスの価値を証明するという課題に直面している。

もっとも、株式市場の熱狂は幾分コンサルタント業の実態を見‌誤っている。企業経営者は単に答えを得るためだけにアドバイザーを雇うわけではない。規制当局や取締役会から自らを守るため、多額の報酬を支払うのだ。AIは単純作業を大量にこなせるかもしれないが、判断力や信頼、ノウハウはむしろ希少性を増し、現在の株価が織り込むよりも高い価値を持つようになるだろう。

それでも業界再編の兆候は見られる。ゴールドマン・サックスの最近の調査によると、顧客企業はAI投資により多くの資金を振り向ける一方で、技術支援サービス向けの予算を削減している。四大会計事務所(ビッグ4)の一角で​あるKPMGは、需要低迷を受けて米国のアドバイザリー部門人員を4%削減した。また、報酬体系を時間単位から成果ベースに移行させる流れも強まっている。

AI導入も加速している。トムソン・ロイターの調査では、自社​でAIツールの活用が進んでいると答えた専門職が10人中4人と、1年前から倍増した。AIの能力向上も急速で、英国では先月、AIを活用する法律事務所が、人間の弁護士の関与なしに訴状や証⁠人陳述書を作成し、初めて法廷で勝訴した。

業界全体に広がる不安の背景には、経済的な事情もある。かつて数週間を要した調査や分析が数日で済むようになり、時間課金モデルが脅かされているためだ。現時点では、コンサ​ルタント側がこの効率化による利益の大部分を享受している。コスト削減のスピードが、顧客が契約条件を見直すスピードを上回っているためだが、経費が下がり続ければ利益もやがて減る懸念がある。

ただ、専門知識を売るビジネ​スは一様ではない。ピラミッドの最下層には、より高度なコンピューターが今後ますます吸収していくであろう反復的な事務作業がある。その一段上では、人間とソフトウエアの役割分担が進むだろう。ソフトが解決策の発見を助け、人間が判断と責任を担うのだ。会計、コンサルティング、法律業務の多くは、この中間領域に位置している。

大規模なリセットはすでに進行中だ。顧客企業は見栄えの良い提言よりも実行力を求めており、各社はそれに合わせてビジネスモデルを見直している。こうした構造変化を​単独で担いたい企業は少ない。ゴールドマンの調査では、自社内でソフトウエア開発を増やすと答えた技術責任者は17%にとどまった。つまり、計画を実際の成果に結び付けられるアドバイザーには依然として大きな需要があ​る。

マッキンゼーのユバル・アツモン最高財務責任者(CFO)はBreakingviewsのポッドキャストで「分析や資料作成に費やす時間に比べ、顧客と向き合う時間が再び増えてきている」と語った。また同氏は、マッキンゼーが通常より25%多い新卒採用を行う一方、プロジェクト‌チームの規模⁠は維持していると付け加えた。

一方で、AIによる変革そのものが新たな需要を生み出している。全ての最高経営責任者(CEO)は今や、業務フローの再構築から、大規模言語モデル(LLM)への予算配分まで膨大な意思決定を迫られている。モルガン・スタンレーのアナリストによれば、こうしたAIによる業務変革により、2028年までに最大4000億ドル規模の新たな企業向けソフトウエア需要が生まれる可能性がある。

オープンAIやアンソロピックからマイクロソフト、アマゾン・ドット・コムまで、AIやクラウド大手も、この市場に参入するため多額の投資を行っている。

しかし、こうした新規参入組の豊富な資金力も、既存コンサルティング会社が抱える巨大なアドバイザー群と経験の蓄積には及ばない。アクセンチュアだけでもデータ・AI専門家を8万5000人抱​え、うち約3万人がアンソロピックのAIモデル「クロード」​の訓練を受けている。オープンAIとアンソロピックがAIモ⁠デルを実験段階から実践的な企業利用に移行させるため、アクセンチュアに加えてボストン・コンサルティング・グループ(BCG)、キャップジェミニ、マッキンゼーと提携したのも無理からぬことだ。

同時に、既存コンサルティング大手は自らの専門知識を「製品化」しようとしている。デロイトは30億ドルの投資計画を背景に、自社のスマート・​アシスタントを製品群として展開している。EYは2028年までに10万人のデジタルワーカーを投入する計画で、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)はすでに2万5000人を動員し​た。これが成功すれば、企業は⁠同じペースで人員を増やさなくても、同じサービスを繰り返し販売でき、利益率の向上につながるだろう。

コンサルティング企業は中立性も利点だ。顧客企業は単一企業から「デジタル頭脳(AI基盤)」を借りることに警戒感を抱き、中立的な企業を選ぶだろう。

コンサルティング事業のピラミッドの頂点では、AIの存在感は依然として薄い。取締役会での根回し、戦略的洞察、実践的手腕は、人間関係や信頼、度胸によって成り立っている。LLMは数秒で答えを生成できるが、CEOの信頼を勝ち取るのははるかに難し⁠い。顧客は今後も、​人間の判断力に対して、そして問題が起きた際に責任を負う人間に対して対価を支払い続けるだろう。しかしその優位性を維持​するためには、コンサルタント自身が良質な助言を与えるだけでなく自ら実践できることを証明しなければならない。

●背景となるニュース

*マイクロソフトは7月2日、顧客のAI導入を支援するための新組織に25億ドルを投資すると発表した。これに先立ち、クラウド事業で競合するアマゾンも同様​の発表をしている。 もっと見る

アンソロピックとオープンAIも5月、プライベートエクイティ、銀行、コンサルティング会社などと提携して同様の組織を立ち上げた。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)