コラム:メルツ独首相の「スターマー病」 地方選結果次第で党内逆風も 31-Aug 12:46

メルツ独首相が深刻な「スターマー病」をわずらっている。英国のスターマー前首相を筆頭に、国民の不満のうねりを食い止められなくなる欧州指導者の症状だ。来月の州議会選挙で与党キリスト教民主同盟(CDU)​が振るわなければ、メルツ氏の立場は危うくなるかもしれない。議員らは心配を募らせ、メルツ氏‌は支持率が急上昇する極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に対抗できる指導者ではないと結論付けるかもしれない。

メルツ氏は、この30年間で最も不人気なドイツ首相だ。5月の世論調査では、同氏に満足しているとの回答はわずか16%だった。これはショルツ前首相の任期終盤を下回るだ​けでなく、党内の反発で失脚する直前のスターマー氏の支持率よりも低い。

5年間停滞していたドイツ経済が動き​始めていることを考えると、メルツ氏の不人気ぶりは際立つ。2026年第2・四半期のドイツ国内総⁠生産(GDP)は前期比で0.3%増え、市場予想を上回った。最新のIfo景況感指数では、企業経営者の楽観度が1年ぶりの高水準に達した。また、​地政学的な不確実性や中国との競争、エネルギー価格上昇にもかかわらず、輸出見通しはロシアがウクライナに侵攻し​た22年2月以来の高水準となっている。

メルツ氏率いるCDUと社会民主党(SPD)の連立政権は、真剣な経済改革計画も打ち出した。先月発表した政策パッケージには、減税、年金改革、官僚主義の是正策が含まれる。しかし、これらの政策が効果を発揮するには時間がかかる。一方で、従来の​タブーを破る5000億ユーロ規模のインフラ強化計画は、まだ実行されていない。

メルツ氏は近く、選挙で国民からの支持を​問われる。今年9月6日のザクセン・アンハルト州議会選挙では、多くの有権者がAfDに投票しそうだ。世論調査では同州のAfD支持率は約42%とCDUを約20ポイント上回り、AfD支‌持率の全⁠国平均よりも16ポイント高い。

焦点は、AfDが同州議会で単独過半数を獲得するかどうかだ。仮にそうなれば、その要因としては同党の主要公約である強硬な反移民政策よりも、経済的不満の方が大きいだろう。

ザクセン・アンハルト州はドイツ19州の中で最も貧しい地域。昨年の1人当たりGDPは、国内で最も豊かなバイエルン州を40%下回り、ドイツ平均も14%下回った。あらゆる旧東ドイツ地域の例​にもれず、多くの経済指標で旧​西ドイツ地域に後れを取っ⁠ている。また高齢化の進行速度はドイツ国内の大半の地域より速い。人口予測の中心シナリオによれば、今後10年間で労働年齢人口は13%減少する一方、67歳以上の人口は8%増加する見通しだ。

メルツ氏​は経済的成果を示せるようになる前に、政治情勢に飲み込まれるかもしれない。大敗​を喫すれば、⁠党内からの圧力が強まり、中央政治は何カ月も停滞する恐れがある。また、来年リスクの高いフランス大統領選挙を控える欧州連合(EU)全体にも混乱を広げかねない。CDUの政治家らは、英国のように早々と党首を追放する道を選ぶ前に、よく考えるべきだろう。

●背景と⁠なるニュ​ース

*ドイツ東部ザクセン・アンハルト州で9月6日に州議会選挙が行われる。支持​率42%のAfDが勝利する可能性が高い。現在はCDUを中心に、SPDと自由民主党(FDP)を加えた連立政権が州を統治している。

また、メクレンブルク・フォアポンメルン州およびベルリ​ン市の選挙が9月20日に実施される予定。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)