長期停滞から脱却しつつあるドイツ経済にとって、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の躍進はエンジンに投げ込まれたスパナというよりは、むしろゆっくりと漏れ続けるオイルのようなものだ。製造業は拡大局面に回帰しており、2026年と27年に計1200億ユーロの公共投資が予定されているほか、12年間にわたる計5000億ユーロのインフラ基金と防衛費の急増も見込まれている。
とはいえ、反移民と親ロシアの姿勢を示し、欧州連合(EU)からの離脱を掲げ、産業政策に懐疑的なAfDへの支持が高まっていることは、欧州最大の経済大国であるドイツにとって長期にわたる重大なリスクをはらんでいる。
6日実施された東部ザクセン・アンハルト州議会議員選挙でAfDは首位となり、得票率は44%と2倍超に膨らんだ。一方、メルツ首相が率いる保守与党キリスト教民主同盟(CDU)の得票率は17%に落ち込んだ。
もしもAfDが州政府を樹立すれば、第二次世界大戦後で初めてドイツの極右勢力が政権を握ることになる。また、今月下旬のメクレンブルク・フォアポンメルン州議会議員選挙でも、世論調査でAfDが首位に立っている。
ドイツ東部でのAfDの躍進が、連邦議会の勢力図を塗り替えるわけではない。直接の経済的影響も限られ、ザクセン・アンハルト、メクレンブルク・フォアポンメルン両州を合わせても国内総生産(GDP)のうち3.2%に過ぎない。しかし、AfDは全国の世論調査でも首位を走っているため、メルツ連立政権は動揺を隠せなくなるかもしれない。
支持率が既に低迷しているメルツ氏は、キア・スターマー前英首相やカナダのジャスティン・トルドー前首相といった改革志向の指導者と同じように党首から引きずり下ろされるリスクに直面している。
たとえそのような変化があったとしても、経済への影響はおそらく限られる。LSEGデータストリームがまとめたアナリスト予想(中央値)によると、ドイツのGDPは2026年に前年比で0.6%増え、27年は1%超伸びる見通しだ。
米国とイスラエルのイラン攻撃に端を発した中東紛争が響いて個人消費は再び鈍化しているものの、財政刺激策がこれを相殺し、相次いで締結された大規模な調達契約の効果がサプライチェーン(供給網)の下流へ波及している。長年にわたる放置を経て、企業が生産能力の再構築を余儀なくされているため、国内の資本財受注は力強く回復している。
最近は、人工知能(AI)ブームにも支えられた世界的な製造業の回復にけん引されている。貿易はもはや足かせではなくなり、26年第2・四半期のGDP成長率に0.6%ポイント寄与した。
確かに、これだけでは構造的な課題は解決されない。こうした課題に対処するためにはメルツ連立政権が労働市場の規制、年金制度、計画策定でより抜本的な改革に踏み切る必要がある。さらにメルツ氏は、中国に対する強硬姿勢が、化学産業や自動車産業が抱えている課題の解決につながることを証明しなければならない。
皮肉なことに、短期的な経済効果をもたらす方法を見抜いたドイツの有権者たちは、かえって国をより暗く、繁栄から遠ざかる未来へと導いてしまう恐れがあるのだ。
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