生物学者のチャールズ・ダーウィンなら、今日の市場に困惑するかもしれない。通常ならば鋭い記憶力は生存のための不可欠な道具になる。一度わなにかかれば、次はそれを避けようとするのが本能だ。実際、経験豊富なマネーマネジャーたちは普通、過去のパターンを血肉化することで、情報に疎い「群れ」を淘汰する好不況の波を乗り越えてきた。ところがメモリー半導体大手の米マイクロン・テクノロジー(MU.O)の時価総額を1兆ドル超にまで押し上げた投資家らは、この鋭く進化した能力を失いつつあるように見受けられる。
マイクロンは人工知能(AI)を燃料にしたロケットのような快進撃を続けている。チャットボットが求めるデータ保存用シリコン半導体に対する強烈な需要が、供給を上回っているからだ。半導体生産工場はフル稼働しており、価格は急騰している。これは即座に富をもたらすレシピと言える。LSEGのデータによると、マイクロンの2024年8月までの年度のフリーキャッシュフローは1億2100万ドルだったが、今年度には380億ドルに達すると予想される。来年度は、そこからさらに倍増する見込みだ。
当然ながらマイクロンの株価は、サムスン電子(005930.KS)やSKハイニックス(000660.KS)といった他のメモリー半導体大手とともに急騰した。
しかし良い時は永遠には続かない。特にメモリー業界は市場が徐々に調整され、新たな供給がゆっくりと開始されたり、需要が横ばいになったりすることで、歴史的に好不況の波が激しい傾向にある。例えばマイクロンは23年度に50億ドルを超える損失を計上した。「適者生存」の理論により、こうした環境は好況期に株価収益率(PER)を低く見積もり、苦境期にはPERを高く設定する、状況に精通した投資家を育ててきた。
マイクロンの株価は現在、予想利益の約8倍で取引されている。この倍率は、業界が供給過剰から脱しつつあった2年前と比べれば十分に低い。ただ過去20年間の同社の平均的なPERは、予想利益のわずか5倍だ。つまり歴史的だが不確実なブームの最中にあって、PERは依然として過熱感を示している。
それでも競合他社は以前より少なくなり、半導体のさらなる微細化は極めて困難になっている。その結果、供給を増やすことは難しさが増した。しかし1990年代に韓国勢が4年で売上を8倍に伸ばした局面のように、台頭する中国のライバルがこの均衡を崩す恐れがある。さらに重要なのは、AIの経済性も、AIが牽引する需要も大いに疑わしいことだ。
今のところ、こうした懸念は大事だと思われていないようだ。マイクロンの株価は26日だけで19%上昇した。もし再び「不作の時期」が到来すれば、投資家という名の群れにとって、それは不快なほどダーウィン的な、つまり残酷な適者生存の瞬間となるだろう。
●背景となるニュース
*マイクロン・テクノロジーの時価総額が26日に1兆ドルを超えた。株価は2年で7倍近くとなり、今年初めからの上昇率は177%に達している。 もっと見る
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)