コラム:今年は違う米国株の「9月相場」、季節性以外にも波乱要素 03-Sep 15:53

数十年分のデータを照らし合わせると、米国株にとって9月の値動きは平均では他の月に比べて著しく軟調だ。では、投資家は年内にさらなる乱高下を覚悟しなければならないのかと言えば、ほぼ確実にイエスだが、それは単に季節的に値下がりしやすい「9月効果」だけが理由ではない。

「5月に売って市場から去れ」という格言に妥当性があるとすれば、9月はもっと曲折のある時期と言えるだろう。

想定されるのは、5月末のメモリアルデー以降に割安化した株を夏休みから戻った投資家が買い戻したがるという展開。しかし歴史が示すのはその反対の動きだ。

1950年以降、9月にS&P総合500種は平均で0.68%下落していることがカーソン・グループのライアン・デトリック氏の分析から読み取れる。過去75年間の平均リターンを小数点1位までに丸めると、1年で9月だけがマイナスになる。

また、75年間のうち9月は値上がりよりも値下がりした回数の方が多い。1950年から9月にS&P総合500種がプラスのリターンを記録したのは全体の44%と、月別で最低にとどまり、唯一50%に届かない。過去10年の9月の平均リターンは約マイナス2%とさらに成績が悪化する。

<最も冷酷な顔>

こうした季節的な値動きを明確に説明できる要素はない。

一部のアナリストは、年度末の接近に伴って運用担当者が不振の保有株を投げ売りする点に言及。運用担当者がこの時期、税制対策としてキャピタルゲインを限定したり、相殺したりするために売りに動くとの見方もある。

さらに投資家心理が影響している面があり得る。数十年にわたって9月のひどい値動きを経験してきた投資家としては、今年も9月は厳しいだろうと予想しながら夏休みから復帰するだろう。その警戒感が悲観主義に変わり、売りが売りを呼ぶ結果になってもおかしくない。

しかし、こうした説明にいくら疑念が残ろうと、数字は嘘をつかない。過去1世紀の大半で、9月は国際的な株式投資家に市場が最も冷酷な顔を見せてきた。

<好材料は織り込み済み>

そして今年の9月はとりわけ波乱が起きる条件が整っている。

主要な米国株価指数は過去最高値か最高値近辺で推移しており、特にハイテク株は割高感が限界に達しつつある上に、一定銘柄への資金の集中度はかつてないほど高まっている。

確かに相場の勢いは強気派の味方だ。S&P総合500種とナスダック総合はそれぞれ4カ月と5カ月にわたって連騰。第2・四半期決算シーズンが幕を閉じようとしている今、業績発表済み企業の8割近くの利益と売上高はともにアナリスト予想を超え、LSEGがまとめた長期平均のそれぞれの比率(67%と62%)よりも高い。

その上、金利先物の想定が正しいとすれば、米連邦準備理事会(FRB) は今月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げを決める公算が大きいと期待できる。

ただ、市場参加者の話ではこれら全ての材料は株価に「織り込み済み」だ。特にナスダック総合の上昇率は5月の9.6%から8月は1.6%まで鈍化するなど、夏場にかけて相場の勢いにも陰りが見えてきた。

次の展開を大きく左右するのは、今年これまでと同じようにハイテク株の値動きになりそうだ。幾つかの尺度を使うと、ハイテク株は25年前のドット・コム・バブル崩壊以降で最も割高化している。

投資家もそうした事態に気づいているもようで、最近はハイテク株から割安な小型株へと循環物色を開始している。ハイテク株への記録的な資金集中を踏まえると、この循環物色の動きが続けば市場全体に大きく影響する可能性がある。

だから最も控えめに言ったとしても、9月はボラティリティーが高まるだろう。もちろん過去の値動きは必ずしも将来の状況を裏付けるわけではない。しかし警戒心を持つのが穏当だ。株高がここまで進む中で、シーウルフ・キャピタルの共同創設者ポーター・コリンズ氏がX(旧ツイッター)に投稿したように、投資の心得としては「目を広く見開くアプローチ」が望ましい。

相場調整のきっかけになりかねない多くの材料が9月に出現しようとしており、投資家はよそ見しないことが賢明だ。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)