6月日銀短観、大企業・製造業2期ぶり改善:識者はこうみる 01-Jul 09:38

日銀が1日に発表した6月短観は、大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス13と2期ぶりに改善した一方、大企業・非製造業のDIはプラス34と2期ぶりに悪化した。総じて米国の通商政策を背景にした不確実性の高まりが業況の下押しになった一方、価格転嫁の進展で企業収益が好調に推移した状況を反映した。

市場関係者に見方を聞いた。

◎円買い材料には強く反応、物価の伸びに注目

<ステート・ストリート銀行 東京支店長 若林徳広氏>

強めの日銀短観など、円買いと言っていい材料には強く反応する一方、円売り材料への反応には勢いがない。ドル/円は上値が重く、なかなか上がらない。145円では跳ね返されるというのを肌で感じる相場になっており、トレーダーとしてはドルロングをあまり長くは持ちたくないだろう。上方向には長いトレンドが形成されない状態だ。

オンラインの製品価格を抽出したステート・ストリートのプライススタッツでは、物価上昇の鈍化がみられる。日銀にとっては今後、インフレが落ち着く、もしくは低下するなどして、次第に利上げしづらい状況になっていく可能性が気がかりだ。

物価の伸び鈍化は利上げをしないことをサポートする材料にもなり得る。現在はドル/円はなかなか上がらないが、140円は割れておらず、動いていないということでもある。日銀や米連邦準備理事会(FRB)の動向次第では、トレンドが転換する可能性もある。

◎景況感底堅さの持続性見極め、日銀は様子見継続か

<東海東京インテリジェンス・ラボ シニアアナリスト 澤田遼太郎氏>

今回の短観は、米関税の影響が反映されている内容ということで注目されていた。大企業・製造業の業況判断指数(DI)は市場予想を上振れたが、この底堅い動きが持続するかは現時点では分からず、どのように捉えれば良いか判断は迷うところだ。

米国との関税交渉がなかなか進んでいないことから、日銀の政策スタンスとしても協議の行方を見極めたいというムードではないだろうか。

きょうの日経平均は売りが先行しているが、前日までの5連騰の反動とみられる。下げ幅は大きくなく、400円程度の下落であれば健全な調整だろう。短観発表後の市場の反応を見ると、最終品だけでなく部品メーカーなども買われており、指標の結果が下支えとなっている面はありそうだ。

相場の地合いは悪いわけではなく、米国の利下げ期待が維持される中では株価は上方向を試す展開となりそうだ。

◎トランプ関税の影響まだ限定的、景況感は堅調

<農林中金総合研究所 理事研究員 南武志氏>

自動車の業況判断DIは低下はしたが、まだプラス圏内にとどまっている。一方で鉄鋼など既にマイナスに沈んでいるところもある。業種によって景況感はバラけていて、トランプ関税が直接的に何か影響を与えたかは判然としない。総じて大企業製造業の景況感は堅調で、しばらくはトランプ関税のインパクトを見極めたいということだろう。

非製造業DIは悪化したが、歴史的に見ても高い水準にあり、インバウンドの影響も含めて堅調に推移している。

設備投資は、大企業を中心に大きく上方修正された。引き続き設備投資意欲は堅調だ。売上高と経常利益は増収・減益の見通しだが、更新需要が大きいDX・省力化などニーズは多い。

全般的に見てトランプ関税の動きによる影響はまだ限定的で、景況感にも悪影響は及んでいない。4月初めに相互関税が発表された直後は利上げがかなり遠のいた印象があったが、今マーケットはそれ以上にリバウンドしている。