3日の日本株は前日の底堅さから一転、大きな下げを演じた。日経平均は1700円超安と今年最大の下げ幅となった。イラン情勢の短期収束シナリオに異変が生じているほか、需給面の偏りが下げに拍車をかけた格好だ。短期的には値動きが大きくなるリスクが意識されている。
「取り立てて追加の材料もない中で予想以上の下げになった」と、この日の日本株安についてフィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッドはみている。
イラン情勢の緊迫化や、プライベートクレジット市場への懸念といったリスク要因が重なる中でも、上昇相場に出遅れた投資家による買い戻しの余地が前日まではあり、日経平均は下げ渋っていた。そうした需要が一巡したことで、多くの市場関係者の想定を上回る下げとなったとみられている。
円金利も上昇(債券は売り)し、ドル/円も円安基調が継続したことで「トリプル安」を意識する声も聞かれたが「日本売りとの見方は行き過ぎで、これまでのところ日本株売りの範疇だろう」(しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンド・マネージャー)との見方が聞かれる。
前週末までの日経平均とTOPIXの年初からのパフォーマンスが約17%高と15%高だった一方、米ダウ工業株30種は1.9%高、S&P500は0.5%高、ナスダック総合は2.5%安で「グローバル投資家の視点からは利益確定の対象になりやすかった」(藤原氏)とみられている。年初から48%高となっていた韓国の株価指数KOSPIはこの日、7%安となった。
需給面でも下げ加速の要因がうかがわれる。東証がまとめるデータによると、2月27日までの週の2市場信用取引現在高では、信用買い残が5兆5400億円に膨らんでいた。信用買い残は、信用取引による株購入のうち資金返済が完了していない分の残高であり、潜在的な売り需要を映す。
その信用買い残は、前の週に2006年5月以来、19年9カ月ぶりの高水準となっており、それに比べればわずかに減ったものの、依然として高水準だ。先物主導の下げを受けた裁定解消売りが現物を押し下げ、株価の下落を通じて信用買い残の解消が進んだとの見方もある。
<本格底入れには明確なサイン必要に>
朝方までは、米国とイスラエルによるイラン攻撃のリスクは事前にある程度織り込まれていたとして、下げは一時的との見方が支配的だったが、ここにきて「短期収束は楽観的過ぎるかもしれない」(松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリスト)との声が聞かれ始めている。
「イランの反撃能力がどのぐらい残ってるかわからず、ホルムズ海峡の封鎖がいつ解除されるか不透明な中、早期決着と決め打ちはできない」と、ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは話す。
イランが攻撃対象を広げていることで、米軍側をかく乱しているとみられているほか、米国は産油国でもあるためトランプ米大統領は原油高をさほど気にしていないとの見方からTACO(トランプ大統領はいつも日和る)期待も後退しているという。原油高の影響を受けやすい欧州とアジアにしわ寄せがきやすいとみられている。
「本格的な底入れには、明確な材料が必要だろう」とニッセイ基礎研の井出氏はみている。米国とイスラエル側が作戦終了を宣言するか、ベネズエラへの攻撃後のようにイラン側から米国との対話姿勢が示されるようだと、株価の底入れもあり得るという。
<需給改善ラインは5万円割れか>
もっとも目先は「いったん下方向をみたことで上値は重くなる。ショック安の際には値幅が出るリスクはくすぶる」(増沢氏)との声は根強い。
3日までの続落での下落幅は2600円程度となり、信用買い残の解消が一段と進んだ可能性はある。ただ、下げ加速のリスクが解消するほど十分かどうかはわからない。
例えば24年8月の急落時には、信用買い残が5兆円近くに膨らんでいた7月4週から8月2週までに下落幅は一時約1万円に広がり、信用買い残は約5兆円から4兆円程度に減った。25年4月の米相互関税発表時の下落局面では、3月4週から4月2週にかけて一時6000円超安となり、信用買い残は4.5兆円から4兆円程度に減った。
当時からは株価の水準自体が高まっているため単純比較は難しいが、過去の下げ幅と信用買い残の動向に照らすと、残高は5兆円以上の高水準のままの可能性がある。
松井の窪田氏は、高値から10%以上の調整が発生しないと投げは生じにくく、下げに勢いがつくと15%安ぐらいもあり得るとみる。「(日経平均で)5万円割れをみないと、需給面のしこりは解消しないかもしれない」と窪田氏は話す。
(平田紀之 編集:橋本浩)