日本製鉄(5401.T)の森高弘副会長は、ロイターとのインタビューで、USスチールの収益寄与を今期ゼロへと見直したことについて「すごく短期的な話」だとし、買収した時と比べて「何かが大きく狂っているわけではない」と述べた。2028年には2500億円程度の実力利益(在庫評価差等を除いた事業利益)を見込んでいたが「その目線はあまり変わっていない」とし、中期的な利益に自信を示した。
同社は11月、26年3月期(国際会計基準)の業績予想を下方修正した。買収したUSスチールについて、今期実力ベースの事業利益で800億円の利益貢献を見込んでいたが、これをゼロとしたことが大きな要因となった もっと見る 。
USスチールの利益貢献が今期は見込めなくなった理由について、森副会長は、米関税政策や金利動向などが不透明になっていたことで需要サイドが様子見となり、市況が悪化したと指摘。コークス炉での爆発事故、変動費が高い構造なども影響したと説明した。
森氏は、爆発事故は一過性の要因であるほか、金利や関税の不透明感も小さくなっており、市況も回復してきていることから「来年は戻ってくると思っている」と述べた。ビッグリバー製鉄所のビッグリバー2の稼働による寄与も期待できるという。ただ、当初、来年は1500億円の利益貢献としていたが「数字についてはよく見なければならないと思っている。一回失敗しており、もう一回同じ失敗はしてはいけない」と、慎重な姿勢を示した。
一方で、USスチールが示した中期計画については「あのような形で行くだろうと思っている。設備投資の効果とシナジーで2030年に(EBITDAの24年比改善額を)30億ドル出す」と自信を示した。これまで過少投資で変動費が高かった部分を修正することで「確実に効果がある」とした。ただ、環境審査や労働力不足などにより、投資のタイミングが遅れるリスクはあるとも指摘した。
同社は米国、インド、タイの3地域を海外事業の中心に据えている。USスチールを起因とした業績下方修正がインドへの投資に影響を及ぼす懸念については「もっと長期的なインドの成長を見て考えている。日鉄の業績が短期的に少し変動したからといって、全然変わらない」と一蹴した。
USスチール買収に伴う資金調達については、最適な方法で調達すると繰り返している。業績悪化がエクイティファイナンスに影響するのではないかとの指摘に対しては「あまり影響はしないと思うが、仮に影響するとしたら、違う方法がベストになるということ。その時々で最適な方法で調達する」とした。
同社は年内に中長期経営計画を発表する予定。森氏は、国内の高炉の追加閉鎖はないと明言。「今はグループ会社とのシナジーを中心に考えており、その中で設備集約もしている。製鉄所を一つ倒しますというような話はない」とした。
*インタビューは11月28日に実施しました。